ブランディングシリーズの第3弾です。第1弾ではブランディングの概念、第2弾ではロゴ・カラー・フォントの設計方法を解説しました。今回は「実際にデザインを外注しながら、どうブランドの一貫性を作っていくか」という実践的なテーマを扱います。
外注でブランドを作るときの課題
デザインを外注しながらブランドの一貫性を作ることは、社内にデザイナーがいる場合と比べていくつかの課題があります。
デザイナーがブランドを知らない状態からスタートする 外注デザイナーは依頼を受けた時点では、自社のブランド・サービス・ターゲットをほとんど知りません。毎回の依頼でゼロからブランドを説明するのは非効率で、認識のズレも起きやすくなります。
制作物ごとにトーンがばらつきやすい 異なるデザイナーに都度依頼すると、個々のクオリティが高くても色・フォント・余白感などのトーンがばらつきやすくなります。「バナーはおしゃれだけど名刺は古い感じ」という状態では、ブランドとしての一貫性が生まれません。
フィードバックのたびに方向性がずれるリスクがある 「もっとやわらかく」「少し明るく」といった修正指示が積み重なるうちに、当初のブランドの方向性から外れてしまうケースもあります。
これらの課題を解決するカギは、ブランドの情報を「資産」として整備し、依頼のたびに共有できる状態にしておくことです。
ブランドガイドラインを外注デザイナーに共有する方法
最低限共有すべき3点
ブランドガイドラインが整備されていない段階でも、以下の3点を共有するだけで、デザイナーとのブランドトーンの認識合わせが大幅にスムーズになります。
1. ロゴデータ(aiデータまたはpng透過) すべての制作物にロゴが入る場合、高品質なロゴデータを共有しましょう。解像度の低い画像データしかない場合は、その旨をデザイナーに伝え、対応を相談しましょう。
2. ブランドカラーのカラーコード 「#1E5BA8」のようなカラーコードで共有することで、どの制作物でも正確に同じ色を再現してもらえます。メインカラー・サブカラー・アクセントカラーの3色をセットで共有しましょう。
3. 使用フォント名 見出し用・本文用のフォント名を共有しましょう。有料フォントを使用している場合は、ライセンスの範囲内で共有できるかどうかの確認も必要です。
より詳しく共有できる場合に追加する項目
上記3点に加えて、以下を共有できるとデザイナーとの認識合わせがより精度高くなります。
- ブランドの世界観・キーワード:「誠実・温かみ・プロフェッショナル」など、ブランドが体現したい印象を言葉で共有する
- 参考デザイン:「このデザインのトーンが近い」という参考を3〜5点共有する
- NGルール:「この色は使わない」「カジュアルすぎる表現は避ける」など、やってほしくないことを明示する
- **過去の制作物:**これまでに作ったバナー・チラシ・名刺などを共有することで、デザイナーが既存のブランドトーンを把握しやすくなる
制作物ごとにブランドの一貫性を出す依頼のコツ
初回依頼時にブランドの世界観を丁寧に伝える
新しいデザイナーに初めて依頼するときが、ブランドトーンを共有する最も重要なタイミングです。ブランドガイドライン・参考デザイン・NGルールを依頼書にまとめて共有し、「このブランドはこういう世界観です」という全体像を最初に丁寧に伝えましょう。
初回の依頼でブランドの方向性をしっかり共有しておくと、2回目以降の依頼ではブランドガイドラインを参照するだけで方向性の確認が省けるようになります。
参考制作物を複数共有する
言葉で「ブランドのトーン」を伝えるのは難しいですが、実際の制作物を見せることで直感的に理解してもらいやすくなります。これまでに作ったバナー・チラシ・名刺などを「このトーンに合わせてほしい」という形で共有することが効果的です。
まだ制作物が少ない場合は、「こういう雰囲気に近づけたい」という参考となる他社のデザインを3〜5点集めて共有しましょう。
フィードバックでブランドトーンを育てる
外注デザイナーへのフィードバックは、単に「ここを直してほしい」という修正依頼だけでなく、「なぜこの方向がブランドに合わないか」という理由を添えることで、デザイナーのブランド理解が深まります。
「このカラーはブランドのイメージより派手すぎる」「このフォントは硬すぎて、ブランドの温かみが伝わらない」のように、修正の理由をブランドの観点から伝えることを習慣にしましょう。これを繰り返すことで、デザイナーが自然とブランドトーンを体得していきます。
複数のデザイナーに依頼するときの注意点
コストや納期の都合で、複数のデザイナーに同時・並行で依頼するケースがあります。この場合、以下の点に注意することでブランドの一貫性を保ちやすくなります。
全員に同じブランドガイドラインを共有する 複数のデザイナーに依頼する場合は、全員に同じブランドガイドライン・参考デザイン・NGルールを共有することが前提です。共有する情報が異なると、制作物のトーンがばらついてしまいます。
完成後に並べて確認する 異なるデザイナーが作った制作物は、完成後に並べて確認することが重要です。色・フォント・余白感が統一されているかをチェックし、ばらつきがある場合はフィードバックして調整してもらいましょう。
ブランドの「決定者」を一人決める 複数の担当者がそれぞれのデザイナーにフィードバックをすると、方向性がばらついてしまいます。ブランドの一貫性を守る「決定者」を一人決め、デザインの最終確認と承認を集約することをおすすめします。
継続依頼でブランドを育てる
同じデザイナー・サービスへの継続依頼のメリット
ブランドの一貫性を外注で実現する上で最も効果的なのが、同じデザイナーまたはデザインサービスへの継続依頼です。
継続依頼には以下のメリットがあります。
- ブランドの学習コストが下がる: 依頼を重ねるほどデザイナーがブランドを理解し、毎回のブランド説明が不要になる
- 修正回数が減る: ブランドトーンへの理解が深まるほど、初稿の方向性がずれにくくなる
- 品質が安定する: 同じデザイナーが担当することで、制作物間の統一感が自然と保たれる
単発で異なるデザイナーに依頼し続けるよりも、信頼できるデザイナーに継続的に依頼する方が、長期的にはコストパフォーマンスが高くなることが多いです。
定額デザインサービスとブランディングの相性
月額定額のデザインサブスクは、ブランディングの観点からも相性の良いモデルです。毎月決まったチームに依頼し続けることで、ブランドガイドラインの共有が一度で済み、依頼を重ねるほどブランドへの理解が深まっていきます。
バナー・SNS画像・チラシ・名刺など複数の制作物を継続的に依頼する場合は、都度異なるデザイナーに依頼するよりも、定額サービスを活用した方がブランドの一貫性を保ちやすくなります。
リニューアルとブランディングの違い
「ブランディング」と「リニューアル」は混同されやすいですが、目的が異なります。
リニューアルは、既存のデザインを新しくする「更新作業」です。古くなったロゴを刷新する・Webサイトのデザインを現代的にするといった作業がこれに当たります。
ブランディングは、「どんなブランドとして認識されたいか」という戦略を定め、すべての接点でそれを体現していく継続的な活動です。
リニューアルはブランディングの一部として行われることがありますが、「見た目を新しくする」だけではブランディングにはなりません。ブランドの核(誰に・何を・どんな価値で)を整理した上で、その方向性に沿ってデザインをリニューアルすることで、初めてブランディングにつながります。
まとめ
デザイン外注でブランドの一貫性を実現するためのポイントをまとめます。
- ブランドガイドラインを整備する: ロゴデータ・カラーコード・フォント名の3点を最低限まとめ、依頼のたびに共有する
- 初回依頼時に丁寧に共有する: ブランドの世界観・参考デザイン・NGルールを最初にまとめて伝える
- フィードバックでブランドを育てる: 修正の理由をブランドの観点から伝え、デザイナーのブランド理解を深める
- 継続依頼で一貫性を保つ: 同じデザイナー・サービスに継続して依頼することで、ブランドの統一感が自然と保たれる
- リニューアルとブランディングを混同しない: 見た目を新しくするだけでなく、ブランドの核を整理した上で進める
ブランドは一度作れば完成するものではなく、継続的な発信・制作・改善の中で育っていくものです。外注を上手に活用しながら、長期的にブランドを育てていきましょう。